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このシリーズは多少、荒唐無稽なところがあってもいいかなぁとも思うのですが、これは展開が単調でつまらないし、最終的な落としどころにも意外性がなく、爽快感もありません。ミステリとしてもエンターテイメントとしても「×」です。かと云って文学的だとか衒学的と云った感じでもないです。
確かに戦時中の軍事といった、この手のテーマは長編向きなのかも知れませんけど、同じような描写がひたすら続くのは辛いだけです。ミステリやサスペンスというジャンルではループやデジャブ的な効果を狙って、同じような文章を繰り返すことは結構ありそうですが、装飾的でクドい文体の作者には明らかに向かない手法です。 あと『双面獣事件』と銘打ってるわりに、「魔獣対名探偵」という構図が弱くて物足りなく、肝心の双面獣の禍々しさというのも、文章で説明されてる以上には伝わってきません。殺戮をいとも簡単に成してしまうとか、強靭な肉体を持ち、醜悪な顔であるとか、そんなものに読者は恐怖を感じませんからね。 そもそも、探偵と直接対峙することも少ないのが、どうにも肩すかしというか、魔獣と対峙することで、描かれることの少ない探偵の内面を描いてみるとか、この作品でしか踏み込みような何かがあれば良かったんですけどねぇ…。 …色々と真相に近い部分に触れているので、シリーズとしては読み飛ばすわけにはいきませんが、シリーズを通して読んでなければ無視していいかと思います。 双面獣事件 (講談社ノベルス ニF- 13) 二階堂 黎人 / / 講談社 スコア選択: ★★ #
by yamamusid
| 2008-09-18 00:27
| 小説・書籍:bad!
原作にはないらしい父親視点を盛り込んだ脚本家の涙ぐましい努力、それに巻き込まれてキャスティングされた岸谷五朗が可哀相でなりません。
事前PR番組のインタビューで見せた彼の憂鬱そうな表情が何とも切なすぎました…きっと原作の世界観を理解した上で役に望むタイプの真面目な役者さんなんでしょうね。ドラマの宣伝をしなくてはならないのに、隠しきれない絶望感が漂ってました。 渡辺睦月の脚本と今井夏木の演出で、このクオリティは普通ならありえません。 原作を読んでないのでこんなことを云うのは気が引けるのですが、ベースが悪いとしか思えません。なにせ映像はすっきりとして見やすくて、話のテンポはいい。 悪いところは恋愛ドラマなのに主人公の感情の昂り方や、思考がトレースできないところ。唯一、感情が理解できるの、原作では描かれない父親のみですね。 あと、一番理解できないのは優等生タツヤです。 ヒロは姑息な手を使って人を陥れるような不良ですし、コイツといる限りは美嘉は危険に晒されるわけですから、彼女が不幸になることは目に見えてるわけです。 いくら学校を辞める理由を探していたとしても、土下座ひとつで引いてしまうタツヤの行動はご都合主義的すぎます。 ジェットコースター的な展開を楽しむ色物として観る分には良いですが、恋愛ドラマとしては誰の立場にもハマれないので観るに耐えない。どうしても感情移入したいなら岸谷五朗を観るしかないですかね、娘なんていませんけど。 この土曜8時のドラマ枠は、若者向けに媚びまくっていくつもりなんでしょうか。もうドラマのTBSは見る影もありませんよ。 #
by yamamusid
| 2008-08-14 01:39
| テレビ・ドラマ:bad!
久々の堂本剛主演の連続ドラマ。2004年『ホームドラマ!』以来、なんと 4年ぶりですか…。そりゃ、やっぱりブランクって感じますよね。年齢とか演技とか、もろもろと…。
内容はと云うと、簡単解決してしまう事件を探偵である鞍馬六郎(堂本剛)が33分(CMを抜いたテレビドラマの実際の尺)掛けて、ややこしく無理に引き延ばし解決するというもの。 コメディタッチなミステリドラマなのですが、『トリック』や『時効警察』と云ったものとは違って、終始ボケ通し(ボケを主体に進む)。ドラマと云うよりはシチュエーションコントに近いかなとも思います。ドラマとして見ると、学生ノリのフザケタ作品のようにも見えないこともない。粗いCG合成での移動シーンや情報屋(小島よしお)との無駄な絡みなど、笑いとしてもどうかと思う部分もあるわけで。まぁ、水川あさみが蟻を息で吹き飛ばすシーンは凄いですが…。 ドラマとしての完成度は決して高くないでしょう。しかし、面白いと思ったのは、最初からアンチミステリ、メタミステリとしてあること。普通、探偵は謎を解くものですけど、この探偵は謎を自ら捏造しようします。ここが、ちょっと新しいと思いました。双子の入れ替えトリックや、物質消失トリックなど…普通は犯人サイドが考えることを考えるわけですが、これを探偵がやっちゃうのです。 脚本は別に悪くないと思いますね。あとは演出と堂本剛の演技がどうにかなれば…。 二話目以降に期待しましょうかねぇ。 #
by yamamusid
| 2008-08-04 18:31
| テレビ・ドラマ:good!
今度、映画化されるみたいですね、『ノルウェイの森』。
ちょうど読み終わる頃にそういうニュースをネット上で目にしました。村上春樹がようやくOKを出したらしい。監督はトラン・アン・ユン氏とのこと。ベトナム系フランス人のようですが、キャストは日本人を起用する模様です。 別にこの話題に合わせて読んだわけではないのですが、結果的には、まぁそういう感じになっちゃいました。 しかし、これを映像化するのは難しそうですよね。村上春樹の小説において性的なシーンは頻繁にでてくるわけですが、その頻度と猥雑さとは逆に、文章としては淡白に描かれてるんですよね。映像でどういう風に伝えるんでしょうか。ちょっと興味はあります。 で、小説自体の感想ですが… 全体的に文章がかたく滑らかさがない、ギシギシとした印象を受けました。特に会話の部分なんかは厳しいですね。他の作品でもセリフは多少翻訳めいた感じですけど、『ノルウェイの森』の人物は、日本人がしゃべってる感じでも、また外国人がしゃべってる感じでもないんですよね。この不思議さが作品の魅力に感じられれば、成功だと思うのですが、私には違和感にしか感じられませんでした。 作中でも「僕」の話し方が変だと云う指摘がレイコや緑から数度となくなされるわけで、ここに作者の苦労がにじみ出てる気がします。 あと、かろうじて「僕」の主観で描いてますけど、「僕」は第三者的立場にいることが多く、そのせいか主人公の動機が曖昧なままズルズル進む感じを受けます。 例えば、永沢とハツミとの関係、キズキと直子との関係における主人公。ただ潤滑油として存在してるだけで、「僕」は思想も何も持っていないのです。 これは時代が69年と云う過渡期に設定されていながら、それにまったく興味を持たない「僕」の態度にも表れてる気がします。頻繁に行われる性交や、無情に奪われていく生に対しても積極的ではありません。結果として主人公がどうなったのかを書けないのも頷けると思います。 別に主人公に感情移入しなければならないというルールもないのですが、「僕」という主観で進むことが決められている時点で、読み手は「僕の物語」というカタチで読もうとしますよね。そういう風に読んでしまうと、やはり「やるせなさ」しか残らない気がします。 これはどちらかと云うと、「彼女たちの物語」じゃないでしょうかね。映像化されることで、きちんと「彼女たちの物語」として再生することを望みます。 ノルウェイの森〈上〉 村上 春樹 / / 講談社 スコア選択: ★★★★ ノルウェイの森〈下〉 村上 春樹 / / 講談社 スコア選択: ★★★ #
by yamamusid
| 2008-08-01 17:57
| 小説・書籍:good!
先日始まった新火曜ドラマ。脚本は『女王の教室』の遊川和彦。
大まかに説明すると、今期から男子生徒を受け入れた女子校で、五組の男女がセクシーでファンタジック(なぜかディズニーマニア)な女教師(深田恭子)に学校では教えられない色々なことを教えてもらうという内容。 一時限目(第一話)には「ひとりHはなぜするのか?」という大胆なタイトルをつけられており、この答えを五組の男女の葛藤の中から導きだすという形になっています。 このドラマでは「ひとりHはなぜするのか?」の最終的な答えに「愛してる女のことを、どうしても想ってしまうから」というものを用意していますが、これは論理のすり替え以外の何物でもないでしょう。そもそも答えになってません。 五人の男子の一人であるキヨシが、フィーリングカップル5対5でなかば強引にカップルになった子に実は一目惚れしていた、これは別に構わないと思いますが、初めての自慰行為の時に、好きな子のアイコラまで作るというのは、およそオーソドックスな心理ではない気がします。 別に好きな相手のことを夢想しながら行為に至ったり、アイコラ自体も別に否定する気はありませんが(ネットなどで公開するのは別)、ここで一足飛びにキヨシが変態ではないとなってしまうことに違和感はあります。「愛してるから」を正当な理由として成立させたいのなら、他人の体とくっ付けるアイコラという手法はどうも気持ち悪いのです。 それと女の子側の心理もいまいち分かりません。「好きだからお前で自慰行為した」という申し開きを、素直に受け入れられるでしょうか、特にあの女の子が。どうしても妙にキレイにまとめすぎてる気がします。 自慰行為と他者への愛情を直接的に結びつけるのは無理があるんじゃないでしょうか。これなら、いわゆるエロ本やAVを見ながら自慰行為をするのは変態的となり兼ねません。「性への関心=好きな異性への愛情」が簡単に成立するなら、性産業なんてものは生まれないし、不倫や三角関係みたいなものも少なくなり、もっと平和になるでしょう。 テンポよく進み、見やすいドラマです。扱うテーマにも関心はありますが、こういうテーマであまりキレイな解決を求めることはしないで欲しいですね。今回のは本質から目を背けてるだけという気がしました。 #
by yamamusid
| 2008-07-16 19:14
| テレビ・ドラマ:bad!
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