ライフログ
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久々に映画館にて映画を観た。
実のところ『レッドクリフ』のパート2も同日に観たのだが、今回は割愛させていただく。 この『三十九枚の年賀状』という、邦画。 宮崎県が全面協力し、2004年『お茶の間エッセー』特選作品を基に製作されたもの。 終戦まぎわに負傷した兵隊を世話したことから、主人公ユリ枝(夏未エレナ/麻生祐未)の元には年賀状が毎年届くようになる。40年、二人の重ねた年月の意味とは…?というのが主な内容である。 本作がデビューとなった図師監督。齢70歳のCM作家らしい。 おそらく、監督自身が幼少期に体験された部分はリアルに濃く反映されているのだろう。前半部分、特に、少年たちの描写はすぐれている。その点で前半は面白く観させてもらった。 戦時中の地方での生活、それを飾らずに描こうとした点は評価に値すると思う。 ネイティブでないとおよそ聞き取れないであろう濃い方言から滲みでる人間味、生きた人間が描かれている。 しかし、全体的に、男性に比べると女性の描写は甘く、特に心理面が甘い。 最大の欠点はベースになっている話、原作の良さが死んでいる点。 毎年届く年賀状に、年月を重ねて変わっていく女性の心理、遠ざかっていく戦争の記憶など、切なさなり悲哀なりが込められていないといけない。戦後、手のひらを返したように民主主義万歳的なムードになる中、それに馴染めず取り残されていく主人公という図式も、もっと強調されなくては、40年の月日の重さなど、観客は到底感じられないだろう。 特筆すべきはラストにかけてのシュールさ。 深読みをすれば、切ないシーンともとれなくもないが、画面としてはシュールとしか云いようが無い。残念ながら一番面白かった(ブラックジョークとして笑えるという意味で)。 映画の演出としてはお世辞にも巧いとは云えず、音楽の扱い、シーンの切り方、構成も雑としか云いようが無い。脚本も図師さんがやられてるわけだが、残念ながら下手である。年を取ったユリ枝(麻生祐未)の回想という点を、もっと大事にして欲しい。時系列にそった単純な構成は観易くはあるが、ユリ枝にとっての特別な40年を表すには不向きだ。 こういった演出に殺されてる感があるが、出演されてる役者さんはみな合格点をあげて良いレベルである。気になる役者がいるならば、観ても良いだろう。 松本明子もコントみたいな遺影以外は問題ないし、主人公の夏未エレナと相手役の颯太もコノハナサクヤのコスプレ以外は表情も良い。麻生祐未と風間トオルは不倫旅行みたいで観てられないが、これも役者の責任ではない。温水さんや東国原知事は御愁傷様です、としか。 まあ、散々こきおろしてきたが、実のところ考えるところもあった。 この映画、戦中、戦後を描いた映画としては、珍しくポジティブに描かれている作品で、貧乏の描写にもあまり悲壮感や危機感がない。 リアルじゃないと感じる人も多くあるかも知れないが、少年たちにとっては、もしかしたら戦争は一種のお祭りのようなイベントごとであったのではないかと思う。 前にNHKのドキュメンタリーか何かで、戦時中には「戦争柄」というものが流行っていた、というのを観た。それを映画を観ていて、ふと思い出したのだ。 お茶碗や着物なりに兵隊さんや戦闘機の絵柄が書いてあり、それが今で云うところの仮面ライダーのようなヒーロー扱いなのである。それもポップに描かれている。 この作品で興味深かったのは少年たちの遊びだ。戦時中は戦闘機ごっこなのだが、敗戦後は英語の歌など口ずさむのである。まるで新しい戦隊ヒーローの主題歌を歌うがごとく変わってしまう。「民主主義の象徴のような『青い山脈』が好きだ」などと、東国原が嘯くシーンがあるが、それよりも何気なく描かれている、これらのシーンにこそショックを受ける。 戦争を体験した世代と云えども、少年たちの知る戦争もほぼ情報なのだろう。彼らは実際には戦っていないのだから。 そう、「兵隊さん」という言葉にも、云いようのない違和感があったのだが、親しみと云うよりもよそよそしさのようなもの。それは思うに現実味がないということだったのだろう。何か腑に落ちた気がした。 図師監督は人物の生き生きとした表情(主に陽の感情だが)を撮ることには長けていると思う。スタンドバイミー的なジュブナイルでも撮らせたら、巧くいきそうな気がする。 #
by yamamusid
| 2009-08-01 03:25
| 映画:bad!
藤原紀香主演ということで、始まる前から(色んな意味で)話題を集めていたNHKのドラマ。
代表作なしの女優・藤原紀香には何の興味も持てなかったし、離婚後初の主演ドラマだとか、正直どうでも良かったのだが、精神科医役として風吹じゅんが出ていることや、新聞の評にて原田泰造の繊細な演技が褒められていたことなど、藤原紀香を差し引いても観る価値があるドラマだと思えたので、観ることに決めた。 風吹じゅんは期待通りの仕上がり、飄々とした中にさらっと核心をつく一言がカッコいい。原田泰造は誠実で生真面目なエリートサラリーマンをきちんと演じきっていて、素晴らしいの一言で済ましたらいけないぐらいに素晴らしい。 ところが予想外のことが一つ。 最初からマイナス要因と考えていた藤原紀香の演技、これが何と良い方にハマっていた。 年相応に、それこそ冴えない漫画家に紛いなりにも見えるのである。タッパのある原田泰造がウツ患者を演じることで実際よりも大きく見えなかったこともあり、紀香の無駄な背丈も緩和されてるようにも思えた。 「巧い」とお世辞を云うつもりもないが、これを「下手」と云っては嘘になる感じ。少なくとも役者としてまともに機能してる藤原紀香を観るのは、これが初めてのような気がした。 原作を全く知らないので、コレがベストなキャスティングなのかも、原作の持ち味がきちんと出てるのかは分からないけれど、藤原紀香にとっては意味のあるドラマであったのではないかと思う。 しかし、今回は共演者の力によって、ようやく観られるカタチになっているのも確かだろう、藤原紀香の評価は今回は保留。次回観る機会があったら、ハンデなしの厳しい目で観てみようと思う。 #
by yamamusid
| 2009-06-13 00:20
| テレビ・ドラマ:good!
これもamazonで取り扱ってないらしいので、記事にて補完。
序章に書かれている「お好み焼きで世界を救えるのか」という冗談のような話に惹かれたので、図書館で借りてきて読んだ。 17人の著者による17編の食コラムが収録されているのだが、実はお好み焼きについて書かれてるものは三編程度しかない。しかし、視座がユニークで含蓄があるものが多く、騙された感はあまりない(結論だけ抽出すると「お好み焼きだけでは世界は救えない)わけだが)。 BSE(狂牛病)で食の安全が揺らいだ2002年刊行の本ではあるが、ここで語られていることは現代の食の在り方にも十分当てはまるし、古来から受け次がれてきた「食」という文化の大切さを、改めて考え直すキッカケになる。 おふくろの味による家庭内の躾から始まり、栄養学から見る健康、哲学的考察、宗教的な意味、人口爆発による飢餓からの脱出、食品加工の新技術…などなど。 生きているうちに何回食事をするのかを考えると、一回一回の食事はバカには出来ないと思う。何をどう食べるのか、誰と何処で食べるのか。この本はナカナカに深い。 著者名: オタフクソース株式会社 出版元: オタフクソース株式会社 刊行年: 2002 販売価格: 1,400円 #
by yamamusid
| 2009-06-04 13:49
| 小説・書籍:good!
2000年制作のドイツ映画。60年代のドイツを舞台とした作品。原題は『ANNA WUNDER』。
ビデオ化もDVD化されていないので、メモ代わりにライフログに記せないので困る。 仕方が無いので、ひさしぶりに記事を書くことにした。 タイトル通りにアンナという少女が主人公である(この子の眼の鋭さ、力強さ!)。 母子家庭ということで、社会から冷遇され続ける中、力強く生きようとする少女を描く一方で、大人の拗れた情愛をも細かく描いている。 母親の弱さ、だらしなさがアンナを女として成長させ、父親不在の不安が時にアンナは男になることを強要し課題を乗り越えさせる。随所に挿入されているオタマジャクシ(成長してカエルになる)のシーンに、アンナの成長が重ねられている。 少し気になるのはアンナの弟が全く成長しない点。後半の課題は女性であるアンナがわざわざ男性化してまで乗り越えるべきものなのだろうか。少女は自然と大人の女性へと成長する(なんせ物語の序盤から逞しい)が、少年はいつ大人になるというのだろう?個人的には少女の成長よりも、少年の成長にこそ物語が必要な部分がしているので、この弟の暢気さはちょっと不安に思う。 この映画は成長譚としてみるよりも、少女の視点から大人の情愛をのぞき観る感じで捉える方が面白い気がする。タイトルからアンナが主人公である、と云ってみたものの、真のヒロインは母親のソフィーであるようにも思える。 60年代のドイツ史を踏まえた上で観ると、もっと新しい発見があるかも知れない。ちょっと調べてから見直そうと思う。 #
by yamamusid
| 2009-06-03 22:13
| 映画:good!
レギュラー放送は完全にスルーしていましたが、再放送で集中放送していたので、流し見程度に視聴しました。
何と云うか、映画と同時に作っただけあって金がかかってる、ような気がします。 修学旅行の長崎ロケを一つとっても、名所だけチョイスして撮ったという感じはしませんし、連ドラの画としてはクオリティが高いと思います。 原作は読んでいませんが、おそらく連ドラにするほどのボリュームはケータイ小説にはないはずで、そこは時系列などを工夫してあったり、一つ一つのエピソードを丹念に描くことでカバーしているように見受けられます。キャストの演技も平均以上だと思います(ただ、第四話ラストの、主人公の驚き方は微妙でした)。 しかし… なぜ中学生の設定で作ろうとしたのでしょうか。このキャストなら高校生にしたほうが、素直に見られます。閏年の設定を気にしてのことかも知れませんが、たかだか四年周期なんですから、ずらしてもいいでしょうに。主人公って1992年生まれでしたっけ?もしかして、これは高校時代までエピソードがあって、それを考慮して…。正直、原作知らんので分かりませんね。 まあ、それはさておき、ストーリーに関してはあまり良くはない、というかサービス精神旺盛なベタドラマという感じですよね、これは。とりあえず細部を考えだすと納得できないところが多くあるというか。これについては、いちいち挙げつらうのも面倒ですので、特に気になる部分を書きますが…。 まず、なんと云っても、今のところ最大の山場、第四話ラストの自殺です。 これは感情的に納得がいかないという問題ではなく、死を選ぶという衝撃的な行動を起こすには、いくらなんでもフリが弱すぎるという点。 ゴスロリというマイノリティを貫いていて、あれだけしぶとく生きてた子が、あれはないでしょう。初めてのトモダチである主人公に裏切られたという感情を推しても、まだ弱いと思います。 それに、主人公との信頼関係を強化するエピソードとして、不良グループから逃げてトイレに閉じこもっていたゴスロリの子に、主人公が声をかけるシーンがありますが、あの行動も納得できません。 トイレの出来事は、幼なじみである先輩と姉との三角関係のエピソード中に挿入されていて、この頃の主人公はまだ自分の運命を信じ切れない保守的な人間のはずです。店で金髪の子に文句を云う前ですよね。 時系列を入れ替えて見せることでキレイに繋がってるように見えていますが、考えてみると、不自然です。主人公があれだけの行動を起こせる人間になるのは、せめてアツシの好意に気付き、運命を意識しはじめた後じゃないと説得力がない。ポジティブな人間でも、あれには、そうそう関われないですよ。気を使う連れもいますしね。 あと、主人公の誕生日に関する運命なんですが、あれは巧く出来てる部分とそうでない部分があると思います。 閏日が誕生日の人は確かに少ない(四年に一度なので、四分の一)のですが、閏年生まれの人間が集まるという条件下(同い年ですしね、みんな)なら、普通に同じ誕生日の人を探すのと変わりません。通常、40人学級なら、確率的にクラスに一組は同じ誕生日の人がいますから、大した確率ではないのです。 で、巧くできてる部分というのは、この大したことない偶然を、イギリスの風習や赤い糸の由来になってる中国の故事などを使って強化して、運命らしく演出してる点です。子供の頃に実は…ってのは、運命としてはド定番すぎて、いまさら感動も何もありませんけど、中国の故事と重なることで随分と運命としての箔がつき、説得力が増します。それに、あからさまですが、親同士も実は…的な強化も匂わせてありますし、こういった所がベタドラマとしては抜け目なく出来ていて、感心します。 …と、なんだかんだで結構長々書きましたが。 映画は知りませんが、ドラマは問題なく見られるレベルです。若者のセリフ回しが自然なのはいいですし、変に時系列などを考えなければ、ベタドラマとして楽しめるはずです。オススメはしませんけど、悪くはないです。 #
by yamamusid
| 2009-01-16 06:41
| テレビ・ドラマ:good!
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